父親を親権者とした事例

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■判例 (東京高裁昭和56年5月26日判決)
《8歳の男児につき母親を親権者とした原判決を取り消し、現状を尊重し父親を親権者とした事例》
◎事実
 妻は夫方から出る際に子らの意思を確認したところ、第一子(男)は母親と同行することを希望し、第二子(男)は父のところに残ることを希望したので、第一子のみを連れて実家に戻り、以来3年間夫が第二子を、妻が第一子を監護してきた。夫は子煩悩で約8歳の第二子は夫によくなついており、その近所に
は実姉や兄夫婦が住み、第二子の監護に協力している。一方、11歳半の第一子は妻の実家の家族にもよくなついている。原判決は子らの親権者をいずれも妻と指定した。これに対し、夫は両名の親権を争い控訴した。

◎判旨
 離婚に際して子の親権者を指定する場合、特に低年齢の子どもの身上監護権は一般的に母親に委ねることが適当であることが少なくないし、前記認定のような夫側の環境は、監護の条件そのものとしては、妻側の環境に比し弱点があることは否めないところであるが、夫は、前記認定のとおり、昭和53年8月以降の別居以前にも、妻の不在中、4歳前後のころの次男を約8カ月養育したこともあって、現在と同様な条件の下で次男と過ごした期間が長く、同人も夫によくなついていることがうかがえる上、長男についても、次男についても、いずれもその現在の生活環境、監護状況の元において不適応を来たしたり、格別不都合な状況が生じているような形跡は認められないことに照らすと、現在の時点において、それぞれの現状における監護状態を変更することはいずれも適当でないと考えられるから、長男の親権者は妻と、次男の親権者は夫と定めるのが相当である。

●関連知識
◎親権者の決定基準と傾向
 離婚するときには父母の一方を親権者と定めなければならず、まず父母の協議により決定するが、協議は調わないとき、または、協議をすることができないときは、家庭裁判所が協議にかわる審判をすることができる。離婚裁判の場合には、裁判所が親権者を定める。
 親権者の決定は、親の都合からではなく、子どもの利益や福祉を第一に考慮して決定されなければならないが、判例の中で考慮されている判断の基準としては以下のとおりである。
《父母側の事情》
・心身の状態、生活態度
・住居、家庭環境、教育環境
・経済状態
 (経済状態については一方からの養育費の支払で解決できる場合も多い)
・子供に対する愛情の度合い
・子供の世話にどれだけ時間を使えるか
・離婚の原因、父母の再婚の可能性
・監護補助者(身近に育児を手伝ってくれる親族等)の有無
 など

《子供側の事情》
・年齢、性別
・心身の発育状況
・従来の環境への適応状況
・環境の変化への適応性(転居、転校など)
・父母との結びつきの強さ
・子供の意向
 など
※家庭裁判所の親権者指定の手続では、15歳以上の子供については、必ずその子の意見を聞かなければならないことになっている。また、15歳に達していなくても、意思能力を備えている場合には、子の意見を聞き、意思を尊重する傾向にある。

《子供の年齢と親権者決定の傾向》
0歳?10歳
 母親とのスキンシップを重視し、母親が親権者になる場合が多い
10歳?15歳
 子供の精神的・肉体的発育状況によって、子供の意思を尊重する場合もある
15歳?20歳
 子供が自分で判断できる場合は、子供の意思を尊重する

《統計》  
・離婚に際して親権者となった父母の割合 (平成4年厚生省データ)
  母親  …  73.9%
  父親  …  20.9%
  複数の子があり父母で分けあったケース  …  5.2%
・未成年子のある調停成立・家事審判事件での割合 (平成4年司法統計)
  母親  …  80.3%
  父親  …  14.4%
  複数の子があり父母で分けあったケース  …  5.3%

◎弊社がお受けしてきたご相談に、ご主人様から親権を得たいというお声を多く頂いてきました。法律上、父親が親権を得る事は、非常に困難な事ではありますが、可能性はゼロではありません。様々な状況によって判決は下されますので、諦めず弁護士事務所などへご相談されてみてはいかがでしょうか。又、弊社でもお手伝い出来る事があるかと思いますので、お気軽にご相談下さい。